TOP > 売手#009
Answer
前編では「株式譲渡」と「事業譲渡」について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説しました。後編ではそれらを踏まえて、どのような時にどちらを選択すればいいのかを解説していきます。
Q1:前編で、メリット・デメリットは分かりました。加えて、株式譲渡を選択したほうがいいケースはどのような時ですか?
A1:株式譲渡は、オーナーが売手会社の株式を売却しますので、その対価はオーナーが受け取ります。一方、事業譲渡は、売手会社がその営んでいる事業を売却しますので、その対価は売手会社が受け取ります。オーナーがすぐに現金を受け取りたい場合には株式譲渡のほうが向いています。事業譲渡でオーナーが現金を受け取りたい場合には、配当や役員報酬などで還流させる必要があります。
税負担にも違いがあります。株式譲渡は、オーナーが個人である場合には約20%の所得税等が課されます。一方、事業譲渡は、売手会社の売却益に対して約30%の法人税等が課され、消費税の課税事業者である場合には資産の種類に応じて消費税が課されます。事業譲渡は、売却事業の規模が大きければ大きいほど売手会社の税負担が重くなるケースが多く、株式譲渡が有利になることが多いです。
Q2:事業譲渡を選択したほうがいいケースはどのような時ですか?
A2:事業譲渡は会社が営んでいる事業の一部だけを譲渡できるのが特徴です。そのため、売手が一部の事業を持ち続けたい場合には事業譲渡が向いています。例えば、売手会社に好調な事業と不採算事業がある場合には、不採算事業だけを譲渡して切り離し、好調な事業により注力することができます。
スキームは買手との交渉によって決定しますが、そのスキームによって対価を受け取る者や税負担が大きく変わることになります。売手は、売却後にどうしたいのか(現金を受け取ってリタイアしたい、会社を手元に残して売却対価を使って新たな事業を始めたい等)を明確にしたうえで、売手側として最適なスキームを検討する必要があります。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2024年9月24日
執筆者 アクタス税理士法人 マネジャー 税理士 岡千絢
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