TOP > 買手#006
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前編に引き続き、M&Aの実務で頻出する書面や契約書を紹介していきます。後編では、意向表明書(LOI)、基本合意書(MOU)、株式譲渡契約書(SPA)を紹介します。
Q1:意向表明書について詳しく教えてください。
A1:意向表明書とは、買手が売手へ、買収の意向や希望条件を表明するために提出する書面です。通常、企業概要書の提示を受けた後、対象会社の調査(デューデリジェンス)に進む前段階で提出されます。意向表明書はM&Aプロセスにおいて必須となる書類ではありませんので、買手と売手、1対1で話が進んでいるケースでは、省略される場合もあります。意向表明書には、買手側の企業情報や買収目的を始め、買収希望額、スキーム、スケジュールといった内容が記載されますが、通常、法的拘束力を持たせない形を取ります。なお、意向表明書はLOI(エルオーアイ Letter Of Intent)と呼称することもありますが、書面に記載する内容によって後述の基本合意書と同じような効力を持たせたり、基本合意書のことをLOIと呼んだりすることもあり、会話の中で混同しやすいため、「意向表明書」と呼ぶ方が確実です。
Q2:基本合意書について詳しく教えてください。
A2:基本合意書とは、買手と売手が、M&Aの検討、交渉を進めるために合意した事項を取り交わす書面です。意向表明書は、買手が売手へ一方的に差し入れる書面ですが、基本合意書は、買手と売手双方の合意書の形式となります。通常、買手と売手のファーストコンタクト後、対象会社の調査(デューデリジェンス)の前段階で締結されます。基本合意書には、 買収額や買収条件の参考値、独占交渉権や期間(買手が独占的に売手と交渉できる権利、期間)、デューデリジェンスの手法やスケジュールが盛り込まれます。M&Aのプロセスにおいて、交渉過程で中止になるケースもよくありますので、基本合意書には秘密保持義務や独占交渉権を除き、法的拘束力は持たせないことが一般的です。しかしながら、実務上は基本合意書の記載金額や条件をベースとし、デューデリジェンスの結果を反映して最終条件を決める、という進め方になることが多いので、どんな内容を記載すべきか、アドバイザーの意見も参考にしつつ、状況に応じて決めていきます。なお、基本合意書はMOU(エムオーユー Memorandum Of Understanding)と呼ばれることもあります。
Q3:株式譲渡契約書について詳しく教えてください。
A3:株式譲渡契約書とは、買手と売手が交渉の結果、合意し、最終的に株式の売買条件を定める契約書です。通常、株式譲渡契約書がM&Aの最終契約書※となるため、M&Aプロセスの中でも最も重要な書面となります。株式売買契約書には、売買対象となる株式を特定し、売買株式数や対価、支払条件、誓約事項、契約解除に関する定めなどが記載されます。また、表明保証条項といって、相手方に対し、開示した情報が事実であり、正確であることを表明し、保証する条項が設けられます。なお、株式譲渡契約書はSPA(エスピーエー Stock Purchase Agreement)とも呼ばれています。
※M&Aのスキーム(手法)は株式の売買に限らず、事業譲渡や組織再編その他のスキームとする場合もあるため、必ずしも最終契約書が株式譲渡契約書とは限らない。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2023年7月25日
執筆者 アクタス税理士法人 シニアパートナー 税理士・中小企業診断士 丸山貴弘
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