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M&Aは、言うまでもなく、大変高額な取引です。M&Aに携わる方々は、前準備から調査、クロージングまで、大きな労力をかけて取り組みますが、クロージング後の統合プロセス=PMIも極めて重要です。M&A実行前に想定していた効果が発揮できたときに初めて、M&Aが成功したと言えます。こんなはずではなかった・・・と後悔するM&Aにならないよう、しっかりとPMIに関する基礎知識を抑えておきましょう。
Q1:PMIとは何ですか?
A1:M&Aのクロージング後、対象会社が当社グループの一員となり、円滑に事業が継続され、シナジー等の想定していた効果が発揮できるようにするための統合プロセスです。「クロージング後」だからといって、PMIを別個のプロセスと考えるのではなく、M&Aの一連の流れを次の3つのフェーズで捉えて頂くと判りやすいです。
フェーズ1「なぜM&Aを行うのか」「どういう状態になればM&Aが成功したと言えるか」を明確にする。
フェーズ2 PMIを意識したDDを実施する
フェーズ3 クロージング後、PMIに取り組む
Q2:PMIとは何の略ですか?
A2:Post(~の後) Merger(合併) Integration(統合)の頭文字を取ってPMI(ピーエムアイ)と呼ばれています。
Q3:M&AではPMIが重要とよく聞きますが、なぜ重要なのですか?
A3:M&Aの醍醐味として、自社事業と、買収対象事業をうまく組み合わせ、シナジー効果を発揮できれば、1+1=3にも4にもなります。しかし、うまく組み合わせることができなければ、シナジー効果どころか混乱を招き、却って買収前よりも企業価値が低下してしまい、買収コストの回収さえ不可能になる。という事態が起こってしまいます。M&Aの目的を確実に達成するために、PMIの取り組みが重要と言われています。
Q4:PMIはどれくらいの期間、行えば良いですか?
A4:M&Aの規模や、買収対象会社の内容にもよりますが、一般的には、クロージング後100日程度がPMIにおいて最も重要な期間であり、この期間中に集中して統合プロセスを実行することが望ましいとされています。ただし、上述の通り、M&Aの検討段階から買収後、つまりPMIを意識することがM&A成功の秘訣です。
Q5:PMIでは、どのようなことを行えば良いですか?
A5:PMIの取組は、「経営統合」、「信頼関係構築」、「業務統合」の三つの領域に分類されます(中小企業庁が発行している中小PMIガイドラインより)。各領域における概要は下記の通りです。
PMIの取組領域
引用:令和4年3月中小企業庁 中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~
- 経営統合:異なる経営方針のもと経営されていた2社の経営の方向性、経営体制、仕組み等の統合を目指す。
- 信頼関係構築:組織・文化の融合に向けて実施するべき取組。経営ビジョンの浸透や、従業員の相互理解、取引先との関係構築等を目指す。
- 業務統合:事業(開発・製造、調達・物流、営業・販売)や、管理・制度(人事、会計・財務、法務)に関する統合を目指す。
Q6:PMIは誰が行うべきでしょうか?
A6:買手側の経営者、あるいは買収対象会社を所管する事業部の責任者を中心としたメンバー構成で、PMIに関する意思決定機関とします。その配下に、実際にPMIを企画運営するチームを構成します。このチームは、買手側メンバーだけでなく、買収対象企業に以前から在籍している役員、従業員も含めた人員構成が望ましいです。さらに、必要に応じて取組むテーマごとに、買手側又は買収対象企業の部門責任者を巻き込んで、課題解決を迅速に進めることとなります。また、自社の人材だけでは専門的な知見等が不足する可能性があるため、PMI三つの領域の内、特に「業務統合」については外部専門家に支援を求めることも有効です。
Q7:当社は、株式売買による買収を実行し、その後も子会社として別法人の形態を継続する予定です。合併する訳ではないので、PMIは必要無いと思うのですが、それでもPMIは必要ですか?
A7:はい。M&Aのシナジー効果を最大限に発揮するために必要です。 貴社が検討されているM&Aの目的は、純粋な株式投資ではない限り、買手側の事業と組み合わせてシナジー効果を発揮したり、買手側のメンバーが買収対象会社の役員等に就任して経営改善を行ったりすることで、買収コスト以上の価値を創出することではないでしょうか。子会社として、別の事業体であっても、貴社グループ全体として企業価値を高めるために、PMIに取り組む必要があります。会社は常に変化し続けますので、買収後のケアを行わなかった場合、シナジー効果どころか、現状の事業活動を維持できず、最悪、買収コストの回収もままならない、という事態も想定されます。もちろん、子会社のまま存続させる場合、会社合併に比べれば、PMIでやるべきことは少なくて済みます。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2024年12月5日
執筆者 アクタス税理士法人 シニアパートナー 税理士・中小企業診断士 丸山貴弘
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