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近年、売買価額数千万円程度の小規模M&Aが増加しています。小規模M&Aの場合、DD(デューデリジェンス)に掛けるコストや時間を抑えたいという背景から、DDを簡素化する場合もあります。本稿では、簡易DDについて、注意点も踏まえて解説します。
Q1:簡易DDとは何ですか?
A1:簡易DD(デューデリジェンス)とは、通常のDDで調査する項目を簡素化したり、省略したりすることで、対象企業の調査を簡易的に行うことを言います。
「簡易DD」という正式な定義がある訳ではありませんが、M&A実務上、よく用いられる言葉です。通常のDDは、調査対象会社の潜在的リスクを検出することを主な目的として、網羅的に確認、検証を行います。
簡易DDは通常のDDと比べて調査範囲が狭く、調査深度が浅くなります。
Q2:「簡易DDは、通常のDDのダイジェスト版のイメージですか?
A2:いいえ、違います。ご質問者様が想定されているダイジェスト版とは、DDレポートの「エグゼクティブサマリー」、「報告の要旨」等のタイトルが付された項目で、DDにより検出された事項を1~2ページにまとめたものをイメージされているかと思いますが、このエグゼクティブサマリーは、通常のDDの手続きにより、網羅的に調査を行った結果として作成されるものです。
簡易DDは、最初から調査項目を簡素化したものですので、「ダイジェスト」というよりは、誤解を恐れずに言うと「頭出し」や「切り抜き」に近いイメージになります。
Q3:簡易DDはどのような場面で活用されますか?
A3:専門家にDDを依頼する予算を十分に確保できないM&A案件や、クロージングまでの期限がタイトであり、短期間でDDを完了せざるを得ないM&A案件で活用されます。
また、本格的にDDを行うかどうかを判断するための情報収集を目的として、初期段階で簡易DDを行う場合もあります。
Q4:簡易DDを実施する際の注意点は?
A4:簡易DDは、調査項目を簡素化、省略し、短期間で行われるため、通常のDDと比べてリスクの検出能力は小さくなります。DDで検出されなかった問題点が買収後に発覚した場合、原則的には買手側が対処する必要があります。このように、DDコスト・時間と、リスクは天秤の関係性に近い側面があります。
また、調査項目の簡素化にも様々な考え方があり、調査項目を絞って、その項目を集中的に調査するのか、或いは、金額的に重要性の高い項目のみ調査を行うのか。といった方向性が一致していないと、依頼者が当初想定していた情報が入手できないといった不都合が生じます。
Q5:簡易DDを実施する際に重要なポイントを教えてください。
A5:DDの依頼者とDDを実施する専門家との間で、調査範囲の摺合せを綿密に行うことが重要です。調査範囲の決め方についてはこちらの記事(DDのスコープをどのように決めれば良いですか?(前編))をご覧ください。
例えば財務DDであれば、「調査範囲を資産負債の時価評価のみに限定する」や、「調査範囲を簿価100万円以上のみの科目に限定する」、「提供を受けた資料の閲覧のみに調査手続きを限定する」というような簡素化の方向性を予め合意しておくことが望まれます。
調査開始後、潜在的リスクの可能性が見つかる場合もあり、その場合には、依頼者と専門家で協議の上、通常のDDに切り替えるといった柔軟的な対応が有効となります。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2024年8月13日
執筆者 アクタス税理士法人 シニアパートナー 税理士・中小企業診断士 丸山貴弘
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