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#003M&Aの戦略策定は何から始めればよいの?でお伝えした通り、M&Aは自社の戦略を実現するための手段の一つであり、その戦略を実現するために、必要となる経営資源(製品、技術、ブランド、顧客、人材等)の獲得方法は、M&Aに限るものではなく、他の手段も考えられます。今回は、M&A以外の手段のメリット、デメリットを深堀していきます。
Q1:当社は、既存事業に関連した新たな事業の開発・展開を検討していますが、M&A(買収)以外に、どのような選択肢があるのでしょうか?
A1:(1)自社で新規事業立ち上げ、(2)業務提携(アライアンス)、(3)ジョイントベンチャーといった手段が考えられます。
Q2:「(1)自社で新規事業立ち上げ」について、 M&Aと比較した場合のメリットとデメリットを教えてください。
A2:メリットとして、「新規事業立ち上げの経験値が蓄積されること」、「自社の既存の技術やノウハウを生かして事業開発が可能」が挙げられます。近年では、社内スタートアップとして新規事業開発を行い、ある程度軌道に乗ってきた段階で子会社化するケースや、経営者や従業員が出資することによる資本独立(MBO)の事例が増加しています。デメリットとしては、M&Aのメリットの裏返しとなりますが、想定以上の時間やコストが生じる可能性や、成果が出るかどうかが不透明という点が挙げられます。
Q3:「(2)業務提携」について、M&Aと比較した場合のメリットデメリットを教えてください。
A3:業務提携とは、複数者間で業務提携契約を締結し、技術やライセンス、生産、購買、販売、物流といった業務分野で提携する形態です。契約関係のみが生じるため、提携を開始しやすく、解消しやすいという点で、メリットにもデメリットにもなり得ます。手続きが簡便で、資本関係が生じないことから、提携が必要な業務分野のみ限定して協力体制を取ることができます。一方、関係が希薄化し、最悪、自然消滅する可能性があります。また、資本関係が無いことから、双方の関係はあくまで他者となりますので、情報や技術の流出については注意が必要です。
Q4:業務提携において、関係性を強める手段は無いのでしょうか?。
A4:関係性を強める手段として、業務提携契約に加え、相手方に一部出資する(或いは出資してもらう)ことで資本関係を構築する方法があります。これを「資本提携」と言います。資本関係が生じることから、自然消滅することが無く、提携関係を維持しやすくなりますが、その裏返しで、提携関係を解消しにくくなります。相手方の株式を取得する(或いは取得される)ことになるため、出資する側とされる側という関係が生じます。また、出資額と取得株式数の検討も重要な論点となります。
Q5:「(3)ジョイントベンチャー」について、M&Aと比較した場合のメリットデメリットを教えてください。
A5:ジョイントベンチャー(Joint Venture)は、複数者が共同で出資し、新会社を設立して事業を運営する形態です。業務提携とM&Aの中間に位置付けられ、お互いに出資を伴うことから、資本提携と同等またはそれ以上の関係性強化によるメリットデメリットが生じます。出資比率は双方の協議により決めることができるため、出資比率を50%ずつにすることで対等関係を構築する設計も可能ですが、反面、双方の意見が割れた場合に意思決定が行われず、事業運営が進まないという懸念点も生じます。新会社を設立することになるため、新会社の設立手続きや運営コストが生じる点にも留意する必要があります。 なお、ジョイントベンチャーはJV(ジェイブイ)という略称で呼ばれることもあります。また、新会社を設立せず、有限責任事業組合(LLP)を活用する場合や、共同事業契約により民法上の組合(任意組合)の形態とする場合もあります。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2023年8月22日
執筆者 アクタス税理士法人 シニアパートナー 税理士・中小企業診断士 丸山貴弘
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