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Answer
DD(デューデリジェンス:以下DD)実務の中で「スコープ」という言葉が良く出てきますが、「スコープ」とはどういう意味で使われる言葉なのでしょうか?、また、どのようにスコープを決めれば良いのでしょうか?
このQ&Aでは実務でスコープを決める段階において、必要となる視点を解説していきます。 なお、「そもそもDDがよくわからない・・・」という方は、Q&A「DD(デューデリジェンス)とは?(前編)」と「DD(デューデリジェンス)とは?(後編)」をご覧頂いた上で本Q&Aをお読み頂くと理解が深まります。
Q1:M&AのDD実務における「スコープ」とは何ですか?
A1:「スコープ」とは、「DDの調査範囲や深さ」のことを指しています。
Q2:DDの調査範囲、深さは、何か基準や、定型フォーマットのようなものはあるのですか?
A2:いいえ、画一的な調査基準というものは存在せず、買手側が独自に決めるべきものです。DDにかける時間と費用が無限にあれば、買収対象会社の状況を隅から隅まで調査し、詳細なレポートを作成することも可能ですが、通常は限られたスケジュールと予算の中で、重要性の高い部分に範囲を絞り、限定的な調査を行うことになります。
Q3:重要性の高い部分に調査範囲を絞るためにはどうすれば良いのでしょうか?
A3:スコープを決める際の考え方は本当にケースバイケースですが、一般的なスコープ決めの視点として次の6点が挙げられます。
- M&Aの目的
- 買収スキーム
- 買手側のリスク許容度
- 買収対象会社の業種
- 関係者に対する説明責任
- DDのスケジュール及び予算
Q4:視点1「M&Aの目的」が、どのようにスコープに影響を及ぼすかを教えてください。
A4:M&Aを成功させるためには、「なぜM&Aを行うのか」を明確にすることが重要です(参照:M&Aの戦略策定は何から始めればよいの?)。M&Aの目的が明確であれば、その目的を達成するために必要となる情報或いは達成が阻害される可能性がある情報をピックアップし、その情報入手を最優先とすることで、DDの調査範囲を絞ることが可能になります。
例えば、「高品質の工業製品を製造する技術力の獲得」を目的として対象会社を買収する場合、「製造設備の確認」、「製造原価計算」、「技術力を有するスタッフの確認や人事制度」、「技術力を有する外注先との契約や関係性」、「品質管理の仕組み」、「知財権や許認可関係」といった情報の重要度が高くなります。
Q5:視点2「買収スキーム」が、どのようにスコープに影響を及ぼすかを教えてください。
A5:中小規模のM&Aのスキームとして、「株式譲渡」か「事業譲渡」が良く用いられます。株式譲渡は買収対象会社の株式を取得するので、資産負債、権利義務を全て引き継ぐこととなります。よって、DDでは対象会社を全体的に調べる必要があります。一方、事業譲渡は、契約で定める資産負債、権利義務のみを取得しますので、原則、取得する部分のみ調査すれば良く、調査対象範囲は限定的になります。この他にも、会社分割を伴うM&Aの場合、分割元法人を買収するのか、分割先法人を買収するのかにより、DDスコープの範囲も変わってきます。もちろん、各スキームにはメリットデメリットがあり、DDスコープ以外にも考慮すべき点が多くありますので、専門家の意見も参考にしつつ、慎重に決めるようにしてください。
後編に続きます。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2024年5月2日
執筆者 アクタス税理士法人 シニアパートナー 税理士・中小企業診断士 丸山貴弘
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