TOP > 買手#009
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一般的に、M&Aでは買収前にDD(デューデリジェンス:以下DD)が実施されます。日常では聞き慣れない言葉ですが、本稿ではDDの概要と、DDを行う理由を簡単に解説します。特に、DDを行う理由(3)は、必ず知っておいて頂きたい内容ですので、ぜひご覧ください。
Q1:DDを一言で説明してください。
A1:「買収前に買収対象会社の内容を調べること」です。もう少し詳しく説明すると、買手側が、買収しようとしている会社(又は事業)の実態を把握し、買収価額や買収条件を決めるための情報を入手するために、財務・法務・ビジネス等の観点から、調査することをいいます。
Q2:DDとは何の略ですか?
A2:Due(当然の、正当な) Diligence(努力、精励)の頭文字を取ってDD(デューデリジェンス、ディーディー)と呼ばれています。
Q3:DDは絶対に実施しないといけないのですか?
A3:いいえ、そんなことはありません。DDは法令で定められた手続きではなく、任意の調査手続きです。実施するかどうか、実施する場合の調査範囲等も全て買手側の意向に基づき実施されます。
Q4:なぜDDを実施するのですか?
A3:DDを実施する理由は主に3つあります。
(1)M&Aの目的が達成されるかどうかを確認するため
M&Aを成功させるための最も重要なポイントは、「何のためにM&Aを実施するか」、つまり「M&Aを行う目的」を明確に言語化しておくことです。
DDは「その会社を買収することで、本当にその目的を達成できるか?」を確認するために行われます。例えば、「優れた金属加工技術で評判のA社を買収しよう」と思い買収したが、実はその加工技術を持つ職人さんが来月で定年を迎えて退職予定で、後任は誰もいない。ということであれば、A社を買収しても優れた塗装技術のノウハウを得ることができません。そういった事態を防ぐ為に、買収前の調査が重要となります。
(2)買収価額・買収条件の交渉や意思決定のため
M&Aは、会社の株式や事業を購入する取引ですので、いくらで買うか、どのような条件で買うかを決める必要があります。当然、買収価額以上のリターンが得られると期待できるからこそ購入を決める訳であり、売買価額の決定や、売買条件を交渉するための情報収集のために、DDを実施します。DDを実施しないと、いくらで買うのが適正なのか、どういう条件なら買っても良いのかの判断ができず、ざっくりと感覚で決めるのか・・・という状況になってしまいます。もちろん、最終的にはそういった感覚も大切ですが、何も情報が無い中で、高額の買収を決めるということは様々なリスクを伴いますので、買収前の情報収集が重要になります。
(3)買収後、シナジー効果を最大化するための行動をすぐに開始するため
M&Aは、買収することがゴールではなく、スタートです。元々第三者であった買収対象会社が、買収後は当社のグループの一員になりますので、グループとしてシナジー効果を最大化するために、買収後、すぐに統合に向けた行動に着手する必要があります。この行動を、PMI(Post Merger Integration)といいます。一般的には、クロージングから100日間が勝負と言われています。「買収後、じゃあ何をしましょうか」を考え始めるのでは遅すぎます。買収前のDDの段階で、買収後の行動計画を平行して考えておく必要があります。例えば、買収対象企業が小売業の場合、対象企業の仕入ルートと、当社の仕入ルートとを共通化することで、仕入価格削減効果が見込めることがDDで確認できれば、買収後、すぐにその仕入ルート共通化に着手する計画を立てることができます。 せっかく買収が成功したのに、宝の持ち腐れにならないように、買収後のアクションを事前に検討しておくようにしましょう。
後編に続きます。
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本稿は、中小企業のM&Aにフォーカスし、わかりやすく解説するために、専門用語ではない表現を用いている部分があります。また、網羅性を排除して一般的な内容のみに限定して解説している箇所がございますので、予めご了承ください。
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公開日 2023年12月11日
執筆者 アクタス税理士法人 シニアパートナー 税理士・中小企業診断士 丸山貴弘
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